地上60メートルに太陽光パネルを設置。JR博多シティのプロジェクトを支えた企業と企業の信頼関係

地上60メートルに太陽光パネルを設置。JR博多シティのプロジェクトを支えた企業と企業の信頼関係

九州の玄関口・JR博多駅に直結する大型商業施設、JR博多シティ。駅ビルとしては日本トップクラスの規模を誇る同施設は、地上60メートルの屋上に太陽光パネルを設置し、電力の一部を賄っています。

太陽光発電のプロジェクトには、クリアしなければならないいくつものハードルがあったといいます。今回は、JR博多シティ、太陽光パネルの設置工事を手掛けた協和ホールディングス、ニシヤマの担当者に、プロジェクトのストーリーと、企業間の関係性について語っていただきました。

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高所で行われる工事に必要な対策

JR博多シティの屋上に、太陽光発電を設置する狙いは何だったのでしょうか。

JR博多シティ 当社はESG推進において、2030年度に向けて目標を設定し達成を目指しております。その中で再生可能エネルギー由来の電力比率を3割まで上げることを目指しており、太陽光発電の設置はこの一環となっております。ほかにも、ごみ処理のリサイクル率向上などに取り組んでいます。

JR博多シティの屋上には、福岡市内を一望できる展望台があり、そこに立ったお客様の目に入る位置に太陽光パネルを設置しました。これには環境配慮に取り組んでいるというメッセージとして、アイコンのような意味も込めています。

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プロジェクトの開始から完成まで1年ほどと伺っています。今回の工事にはどんな特徴や難しさがあったのでしょうか。

JR博多シティ 高層ビルの屋上での工事なので、落下物などがないように安全対策を徹底する必要がありました。非常に難しいところでもありますが、実現していただきました。

ニシヤマ JR博多シティ様に対する営業窓口は当社ですが、実際の設計や工事は主に協和ホールディングス様に担当していただきました。我々がソーラーパネルなどの物材を供給させていただいて、工事が進んだ形になります。

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協和ホールディングス 工事現場の真下が駅の広場で、もし落下物が通行人に当たれば大変なことになります。今回の設置場所はルーバーという横桟(よこざん)の上で、その隙間から物が落下する危険もありました。まずはメッシュ状のシートを全面に張り、つなぎ目も隙間がないように合わせました。垂直面もネットを張って全面を覆い、絶対に落下物を出ないように徹底しました。

それに、今回は工事の時間帯についても課題がありました。基本的には夜間に工事をしますが、完全に人通りがなくなる時間帯から工事をすると、どうしても工期は伸びてしまいます。そこでJR博多シティ様と相談の上、まだ人通りがある時間帯には区画を区切って工事を進めました。工事現場の下の地上には誘導員を配置し、カラーコーンを置いて歩行者が入れないようにしました。

このように安全を最優先して、施工させていただきました。それに、取り付け方も既存の鉄骨部材を加工してそこに骨組みを縫う形で、かなり特殊なアレンジした骨組みで施工させていただいたというのが特徴です。弊社としても新たな取り組みの一つになったかなと思います。

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JR博多シティ JR博多駅周辺は福岡空港が近く、建物の高さは60メートルに規制されています。博多駅の利用者数は平日10万人、休日には20万人です。このような場所での高所の工事はあまり例がないのではないかと思います。

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柔軟な対応で予算のハードルをクリア

高所での工事のほかに、苦労した点はあったでしょうか

JR博多シティ 費用面かと思います。高所での工事や安全対策などで想定より費用がかさみ、話が消えかかったこともあります。最終的にはニシヤマ様と協和ホールディング様にご協力いただき、何とか完成しました。

ニシヤマ JR博多シティ様には、「予算に合わないから無理」ではなく、条件の中でなんとかプロジェクトを遂行しようという方向で考えていただいたのでありがたかったです。

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JR博多シティ 一度発表したので、やるしかなかったといった面もあります。「あくまでも計画ですが」とは話したものの、やっぱり一度口から出たものはやらないといけないという想いがありました。

とはいえ、当社の投資判断基準をクリアしないと、実際に進めていくことはできません。例えば、当初は線路側にも太陽光パネルを置く予定でしたが、そうすると電車が止まった短い時間で工事をおこなう必要があり、電車を止める手続きの費用や、工期が伸びてしまうための人件費がかさんでしまいます。協和ホールディングス様から駅前広場側に集約してはどうかと提案していただき、当初の計画とほぼ同じ枚数を設置できました。非常に柔軟に対応していただきながら細かく投資回収を計画して、ギリギリ基準にのせることができた、といったところです。

責任ある事業でパートナーに求めるもの

協和ホールディングス様とニシヤマ様のお付き合いはどのように続いてきたのでしょうか。

ニシヤマ 2020年ぐらいから一緒にやらせていただいていて、太陽光発電だけでも70件ほどに上ります。協和ホールディングス様は提案力と技術力が確かで、安全面への配慮も万全です。難しいオーダーにもくじけないで、アイデアを出しながら対応いただけます。やり取りも早くて、やりやすい。強い関係性をつくれているのは、一言でいうと「人柄」かもしれません。本当に相性のいいパートナーだと思います。

協和ホールディングス 当社は2017年に創業した新しい会社です。太陽光発電や蓄電池の再生可能エネルギーの販売から施工まで一気通貫で手掛けています。太陽光発電を皮切りに脱炭素というところに念頭を置いて、さまざまな事業展開をさせていただいています。売電ではなく太陽光発電で生んだ電気を自分たちで使う、自家消費型の太陽光発電がメインです。最近は工事実績を評価していただき、今回のような規模の大きい会社様との取引が増えています。

お付き合いが始まった頃、ニシヤマ様は太陽光発電の事業を始めたばかりでした。ニシヤマ様の皆様に太陽光発電をテーマにした勉強会を開いたら、150人もの方に参加していただきました。それほど熱心な会社は、これまでにありません。皆さんが積極的に太陽光を取り込んでいこうという姿勢はすごいですし、高い技術力もお持ちです。

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JR博多シティ様にとって、ニシヤマ様はどんなイメージがありますか。

JR博多シティ 大半の会社は、当社がお願いしたものを探してはいただけますが、こちらのニーズを先取りしてくれることは、あまりありません。ニシヤマ様は「今、力を入れていることは何ですか」「困っていることはありませんか」とヒアリングした上で提案をしてくださるので非常に助かっています。

ニシヤマ これまで、JR博多シティ様が求めていらっしゃるものを随時ご提案させていただいています。そこから商業施設の滑り止め設置など、実際に担当させていただくようになりました。そうしたお付き合いもあり、今回のような規模の大きい工事をさせていただくようになったと考えています。

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商社だからこそできる企業と企業を結ぶ役割

あるべきビジネスパートナーとの関係性を、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。

JR博多シティ 語弊があるかもしれませんが、当社は大規模な事業に投資することはできる一方、事業を形にするための技術力、推進力はパートナー企業に頼ることになります。そのなかでどの会社にお願いするのか。ビジネスは信頼関係に尽きると思っています。

JR九州グループは鉄道事業者であり、安全への配慮が最優先になります。JR博多シティに入るテナント様や施設を利用されるお客様にも、ご迷惑をお掛けするわけにはいきません。今回、ニシヤマ様と協和ホールディングス様は、こうした背景を理解していただいた上で、安全を第一に考えてくださいました。信頼とは、そうした部分から生まれるのだと思います。

協和ホールディングス 私たちは事業を開始して間もない、小さな会社です。少しずつ実績を重ねていき、お客様との信頼を構築することで少しずつ大きな仕事ができるようになりました。そして、ニシヤマ様とのお付き合いのように、パートナー様との信頼関係も大事です。

ニシヤマ様は、欲しいものをすぐに調達して、欲しい情報をすぐ仕入れてくださいます。自分たちがお客様にレスポンスよく対応しなければいけない状況で、そうした姿勢がとてもありがたいと感じます。

JR博多シティ そうしたことも、先ほどのお話にあった「人柄」なのかもしれませんね。答えが誠実だったり、こちらのことを理解しようとしてくださったり。今回、危険度が高い仕事を協和ホールディングス様とニシヤマ様と一緒にするという決断したのも、結局はその辺りなのかなと思います。

ニシヤマ パートナーに対してもお客様に対しても、同じ目線でしっかりと協調していく。「モノを売るだけの商社はいらない」という声を聞くことがありますが、ニシヤマが企業間のギャップを埋める、あるいは信頼関係を保つ。そうしたつながりをつくることができればいいなと感じます。

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