今までにないシステムを開発。「お客様にとっての最善」を実現するために

今までにないシステムを開発。「お客様にとっての最善」を実現するために

目や頭の動きやあくびなどをAIで検知し、眠らないよう注意喚起する鉄道運転士見守りシステム「ネムラナビ」。自動車向けの見守りシステムはすでにあったものの、鉄道向けのものはこれまでありませんでした。まだ世の中にない新たなプロダクトを、どのように生み出したのか。開発のきっかけとその過程を、営業と開発の担当者に聞きました。

鉄道運転士の居眠りを防止する「ネムラナビ」

まず、「ネムラナビ」とはどんなシステムか教えてください。

内藤 鉄道の運転士さんの、居眠りやよそ見運転を防止するシステムです。運転士さんの顔や体の動き、あくびなどをAIが検知し、アラームを鳴らして注意喚起します。条件はいろいろありますが、例えば、目を瞑って2秒経つとアラームが鳴る設定になっています。

ネムラナビは、自動車向けのシステムを鉄道用にカスタマイズしたものです。鉄道の運転士の見守りシステムは、他社でも開発しているようですが、実用されたのは今までには弊社のものが初めてです。

製品の開発のきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

内藤 お客様からのご依頼ですね。鉄道車両には、一定時間操作されないとブレーキがかかったり、運転士さんの両手が操縦桿から離れたら自動で停止したりするシステムが搭載されています。一方で、一時期から、SNSに「運転士が寝ていた」と投稿があったり、停車駅でオーバーランしてしまったりと、多くの鉄道会社でも運転士さんが寝てしまうことが課題になっていたそうです。

そこで、緊急列車停止装置とは別に、運転士が居眠りしないよう見守るためのシステムが必要だというご相談でした。鉄道は自動運転になっている部分も多く、特急列車で数十分も停まらないとなると、どうしても眠くなってしまいやすいんですね。 お話をお聞きしていると、なぜかお客様がすごく焦っている印象でした。「どうしたんですか?」と聞いたら、「もう今年度の予算を取ってるんだけど、良いシステム見つからない。ニシヤマさん、頼みますよ」と。「そうですか。それは急がないとまずいですね」ということで、開発がスタートしました。

ニーズに合った技術を探し、カスタマイズする

今までにないシステムということですが、前例がない中でどのように開発していったのですか?

内藤 私たちに相談があったとき、お客様はすでにいくつかのシステムを試されていました。でも、どれも実用には至らなかったそうです。そこで、まずはこれまで試したシステムのどんなところがダメだったのかをお聞きして、その課題を解消できる製品はないかと探しました。

まずネットで調べてみると、近々展示会があって、そこに自動車向けの居眠り検知システムで世界的にシェアの高い中国のメーカーさんが出展することがわかりました。これは使えるのではないかと思ってメーカーさんに詳しく話を伺ったところ、お客様が挙げていたポイントを全てクリアしていました。

そこで、この商品を鉄道向けにカスタマイズできないかと、宇佐川さんに相談してみましら、すぐに「できるんじゃない?」と言ってもらえました。そこからお客様へのプレゼンまで2~3週間。大枠の合意をいただいて宇佐川さんたちに鉄道に取り付けるためのインタフェースを設計してもらい、1カ月ほどテストを行った上での採用となりました。ご相談を受けてから大体半年くらいですね。

同じ商品がない中で半年間の開発期間というのは、よくあることなのでしょうか。

宇佐川 いや、通常と比べて期間はかなり短かったと思います。特に鉄道の場合は乗客の安全面も大切なので。今回の製品は、自動車向けにある程度形ができたものを鉄道向けにアレンジする形だったので、そのぶん短縮できたようなイメージです。メーカーさんに伺って装置を見せていただいた段階で、手ごたえもありました。

内藤さんは商品を売るだけではなく、お客様に要望を伺って自分で解決方法を探すところまでされています。いつもそこまで担当されるのですか?

内藤 そうですね。お客様から新しい依頼があれば、まず市場調査をして、それを扱っているメーカーさんを探します。1社、2社では見つからないこともありますが、私は外に出たり人と話をしたりするのが好きですし、自分で解決方法を調べたり、メーカー様とお話ししたりすることに抵抗はありません。

私は元々メーカーの営業出身で、自社製品しか売れないことにモヤモヤを感じていました。明らかに他社の商品のほうが優れているとわかっていても、自社の商品を売るしかないんです。「ここをもうちょっと改善したらいいのにな」と思いながら、お客様の要望に合っていない提案をするのは気が乗りませんでした。 その点、当社では自由にメーカーを探せますし、今回のようにお客様に合わせてカスタマイズすることもきます。お客様に合わせて、自分で何を売るのかを決めて、探して、届けることができる。いまはとてもやりがいを感じています。

「こんなもの、できないですか?」まだ無いものを生み出す文化

お二人が、お仕事をされる上で特に心がけていることを教えてください。

内藤 お客様に最適な提案をするためには、お客様の困り事をしっかりと捉えないといけません。相談を受けたときに「わかりました」というだけではなく、「なぜ困っているか」をできるだけ細かく質問するようにしています。

今回の例でいえば、お客様が今まで試したけれどダメだった点を聞くことで、何が重要なポイントなのかが見えてきました。そこに合うモノを見つければお客様の課題を解決できますし、もちろん導入いただける確率も高くなります。

宇佐川 私は、メーカーさんを大事にすることにいちばん気をつけています。私たちは商社であり、開発もするとは言ってもメーカーさんのつくる製品がなければ何もできないわけです。メーカーさんが無理だと言えば、お客様に最適なものは提供できません。一緒に協力しながら進めていけるよう、そこを注意しています。

また、開発側としての意見をしっかり伝えることが大事だと思っています。私にとっては、営業さんもエンドユーザーもお客様です。みなさんが納得できる形で進めていくために、技術的なことをしっかり伝えていきたいと考えています。

内藤 私たちがトラブル対応に追われてメーカーさんに返信ができないときなど、宇佐川さんがさっとフォローに入ってくださるときもあり、つい頼ってしまっています。

宇佐川 それはお互い様ですよ。私はお客様と直接お話しすることはないですが、営業の皆さんがよくお客様のニーズをくみ取っていると感じます。お客様がどんなものを必要としているのか、いつもアンテナを高く張っていますよね。

宇佐川さんはお仕事を持ち込まれる側ですが、こういった部署間の連携はよくあることなのでしょうか。

宇佐川 鉄道車両事業部の中では、いつも誰かが誰かに「こんなもの、できないですか?」と聞いています。私が入社した頃から、お互い話を聞きやすい雰囲気がありますね。

今回は私の得意分野でもあったので、やりやすい部分がありましたが、やっぱり自分だけでは対応が難しい場合もあります。それでも、他の技術担当スタッフを紹介したり、相談したりして、できるだけ具体的なアドバイスを返せるようにしています。

内藤 いろいろな知識を持った方がいるので、営業としては安心です。どんな話でも誰かしらにやってもらえるだろうと、みんな臆することなく無理難題を持って帰ってきて、どうしようか検討しています。宇佐川さんは忙しいのにいつもニコニコされているので、話かけやすくて助かっています。

宇佐川 忙しいときも、意識的に上機嫌に振る舞うようにしています。そのほうが相談を持ち込みやすいだろうということもありますが、怒ってばかりいても大変ですからね。ただ、どうしても忘れそうになってしまうときもあるので、スマートフォンのケースの中に「上機嫌にふるまう」と書いた紙を入れています。もうボロボロになってしまっていますが。

お客様のニーズをよく聞く文化や、見つけた課題を連携しながら解決していける体制があるのですね。今後は、どんなお仕事をしていきたいですか?

宇佐川 これまでと変わりませんね。メーカーさんを大切にしながら、関わる方々に技術的なことをしっかり伝えていけるよう気をつけていきたいです。

内藤 今回のネムラナビはお客様のご要望があって形にすることができました。今後は営業としてより先を見据えて、これから何が必要になるのかを自分で考え、お客様に提案できるようになりたいです。

鉄道業界は、お客様の安全を守るという責任から、実績のない新規のものをあまり受け入れないところがあります。でも世の中には、実績がなくても優れたシステムがたくさん存在しています。私たちには、鉄道会社にメーカーさんの新しい技術をご紹介し、鉄道業界とメーカーさんとをつなぐという役割もあるんです。 そうした仕事を通して、安全面や環境面に貢献したいと思っています。鉄道を利用しているお客様や、鉄道分野で働いている方々の負担を減らし、安全に仕事できるようにする。みんなが使いやすくて、環境にも良い鉄道にするための提案ができればと思っています。

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